『日経MJ』紙の2007年ヒット商品番付の西の横綱に「電子マネー」が選ばれた。振り返って みると、07年は電子マネーが一気に普及し盛り上がった年だった。3月に首都圏の地下鉄、私鉄、バ スの連合体がPASMOを発行したのに続いて、4月23日にはセブン&アイーホールディングスがn anacoを、同月27日にはイオングループがWAONの発行を開始するなど大型電子マネーが続々と 登場した。そして、ポイントやマイルといった周辺分野も大いに盛り上がり、電子マネーの発行枚数 と取引件数、取扱高とも急伸したのだ。その意味で、07年は電子マネー普及元年と呼ぶにふさわしか ったといえるし、ヒット商品番付の横綱に電子マネーが選ばれたのもよくわかる。
電子マネーがこれほど急速に普及した理由は、「かざす」という行為がキラーコンテンツになった からだ。改札を通過するのも、コンビニのレジで支払うときも、カードやケータイをかざすだけでよ い。カードをサイフから取り出して読取機に差し込んだり、サインや暗証番号を打ち込む必要はない。 「かざす」だけで短時間ですべてが済む。その手軽さが人気の秘密となったのだ。
筆者はクレジットカードについては20年以上、電子マネーについても黎明期から取材を重ねてきた が、最近になって、カード業界から電子マネーについて、電子マネー業界からクレジットカードにつ いて、それぞれ講演依頼を受けることが多くなった。同じ決済業界ながら、カード業界の方はITを 駆使した電子マネーについてよくわからないことがあり、電子マネー業界の方はクレジット(信用) についてよくわからないという節があるようだ。
クレジットカードと比べると、電子マネーは審査もなく、手軽に使えて便利である。クレジットカ ードが5000円以上の中・高額な買い物に使う「ハレ」のツールとすれば、電子マネーは3000 円以下の日常的な少額決済に使う「ケ」のツールといえる。その利用件数も特筆されるべきで、na nacoは発行数力月目にして1ヵ月間3200万件とクレジットカードの数倍という件数を記録す るに至っている。この消費者との接点の多さが大企業が着目する理由でもある。大量の顧客情報と購 買情報を得て、それを活用してワントウーワンマーケティングを行い、顧客囲い込みと売上アップを 図ろうとしているのだ。彼らはそのために継続的に大資本を投下して、積極的な普及を図ろうとして いる。こうしたパワーに支えられて、電子マネーが急伸しているのである。
特に注目すべきは三通業者である。三通とは交通、流通、通信の事業者のことで、すでにそれぞれ が特定の電子マネーを持ち、ライバルと熾烈な顧客獲得合戦を展開している。なかでも交通系企業は、 JAL、ANA、TJR東日本、トヨタといった大企業が合従連衡で鎬を削りだした。JAL=イオン、 ANA=JR東日本、トヨタ=JR東日本といった連合の動きは、今後の電子マネー業界の台風の目 となるだろう。
通信事業者の間でも激動が予想される。08年春にはソフトバンクがマスターカード、オリコなどと 手を組んで、フェリカの次のNFCという新機能を搭載したケータイを使ってPayPassという電 子マネーの実証実験をスタートする。フェリカは日本など一部の地域でしか使えなかったが、NFC は汎用性があり欧米でも電子マネーとして使える。今後はこの汎用性を絡めた展開が通信事業者の優 劣を計るポイントとなるだろう。
一方で電子マネーのセキュリティもクローズアップされだした。モバイルSuicaのチャージで 不正なクレジットカードが使われ、1000万円近くの被害がでる事件が発生したと07年11月に公表 された。さらに、ポイント交換にも懸念が強まっている。多数のポイント事業者が交換サービスを展 開しているが、ポイントの出目として電子マネーが活用されるようになったため、電子マネーとポイ ントの境目が曖昧になってきた。ポイント業者の中には、十分な引当金を積んでいないところもある ため、破綻した場合に電子マネーやポイント保有者へ被害が及び、補償がでないというケースもでて くる。こうしたリスクをなくすために、金融庁は、電子マネーやポイントを包括的に規制する電子マ ネー法の制定に向けて検討に入った。
いずれにしても今、電子マネー業界は普及期からサービス期へと新しい段階にさしかかっている。 それとともに陰の部分もはっきり浮上してきた。ここでは電子マネー業界、特にICカード型電子マ ネー業界の現状と今後の課題、展望について紹介していこう。
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タイプA、タイプB、フェリカがあり、どれも10cm以内の距離で仕事をする
非接触型ICカードというのは、カード内に埋め込まれたICチップドのアンテナがリーグ/ライタから発せられる電波を受信し、それをエネルギーに変換してデータのやり収りを行う方式をいい、社員証や定期券などで活用されている。 Read more …